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Kの琴線に触れた京版画・摺師の決意「伝統は守るのではなく、継承することが大事」

第2回 京版画(京都府京都市)竹笹堂 5代目竹中健司さん

受け継いだバトンを次へ渡す

 

K 僕らは今、パソコンとプリンターがあれば、とても手軽で簡単に印刷をすることができるし、それが当然の社会に生きています。でも、竹中さんたちのお仕事は、すべての作業が人の手で行われていて、作る人の“想い”も込められている。1枚の印刷物なのにとても温かみがあり、とても素敵だなぁと感じました。時代を越えて残るもの、残っていくものには、そんな“手”の仕事が大事なんだと思ったんです。
竹中 木版画で使う馬連は、世界最古のプリンターです。色の濃淡やぼかしなど、さまざまな表現が可能になります。版画というのは美術作品でもあるけれど、やっていることは“印刷”です。だから、同じものを作らなければいけない。しかし、人間が作るものだから、全く同じというわけにはいきません。絵の具を同じ分量をのせているつもりでも多少の違いはどうしても生まれるんですよね。

竹中さんが摺った浮世絵を興味深く眺めるKさん。

K 馬連で与える力加減によっても違いは生まれますよね。
竹中 力の入れ方次第でいろんな表現ができるし、色の発色が変わったりするんです。紙にしても手すきの紙であれば、厚さもまちまちです。厚くなったり、薄くなっていたりする。ほんまは同じものを作らなくちゃいけないけど、そういう違いがまた木版画の面白さなんです。

竹笹堂の店頭には、木版画のブックカバー、レターセットなど、様々な商品が販売されている。

K 先ほどお店で、様々な生活雑貨など、木版画を使った作品を見せてもらいましたが、竹中さんたちのクリエイティブな発想力を感じました。竹中さんは5代目ということですが、摺師として、求められることは時代と共に変化があるのでしょうか? 
竹中 5代目と言っても、僕はたまたま木版印刷、摺師の家に生まれただけだと、そんなふうに思うこともあります。実は、母方の実家は、機械印刷をやっていたんですよ。だから僕は印刷のサラブレッドじゃないかって思うんです(笑)。

K  ホントですか? それはすごいですね。
竹中 だからといって、僕から先、血を残していくという意識は全然なくて、うちの6代目と僕とは、血は繋がっていないんです。そういうことじゃなく、誰かがやってくれたらいいんです。僕がやるべきこと、僕の役目は、木版画の技術を残していくことだと考えています。1000年以上前に始まって、誰かがやり続けてくれはった先祖の親方の技術を僕は受け継いだ。伝統を守るというよりも、このバトンを次へ渡すこと、継承することが大事なんです。

 

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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